MTS Japan Newsletter No.29

地球深部探査船「ちきゅう」特別視察会(於:清水港)

 e-メールにより既にご案内を差し上げているが、下記の要領で、地球深部探査船「ちきゅう」特別視察会を開催いたします。JAMSTEC側では、各方面の視察希望があるなかで1月中旬より日程調整をしていただきまして、217()に受け入れ可能となったものです。ちなみに、36()7()に現地で一般公開が予定されています。

 今回は、一般公開では見ることが出来ない部分、つまり、保護具を付け、ドリルフロア、ムーンプール、ドリルパイプラック等を含む部分も、特別に見学ができます。まだ見学したことがない方も、既に見たことがある方も、奮ってご参加ください 

◎日 時:2010年 2月17日() 13:30~17:00

◎場 所:静岡県 清水港 興津埠頭
◎申 込:件名欄に「ちきゅう特別視察会参加申込」、と記して、
      「氏名(和・英;必
須)」、「所属」、「電話番号」の3項目を明記のうえ、
      MTS日本支部まで、メ
-ルで申し込み。(mts@ab.inbox.ne.jp

◎〆 切:2月8日()

◎募集人数:20名(先着順)
        <人数がオーバーした場合は若干の調整をお願いする
場合があります>

◎参加費:無料

〔当日の予定〕                        

○集 合:13:30・・・・・・・・・・・JR「清水駅」 改札出口 コンコース。現地へ移動。

○視 察:14:00~16:00・・・2グループに分かれて見学

○解 散:16:30~17:00・・・JR「清水駅」にて解散。

 ※有志にて、清水駅近傍の「魚河岸の市」等見学、懇親会(会費制)

最初に、酒匂MTS日本支部長よりMTSの活動状況および世界の海洋工学分野の方向と今後への期待が示されました。続いて、高川日本支部トレジャラよりCEANS2009視察調査の報告と裏話が報告されました。

 続いて、Dhugal Lindsay博士による特別講演に移りましたが、50枚近いパワーポイントと海中のDVD映像を駆使した印象的な講演会となり、参加者の注目を集めました。講演内容の概要は次のとおりです。

 プランクトンのパラドックスと言えることがあり、プランクトンなどの生態系は多様性が高いのに、実際の海水の物理・化学的因子の多様性は低いのです。これまでのプランクトンネットの調査ではダイオウイカやマッコウクジラが集まる場所に特別に餌となるプランクトンは多くない結果であり、これではイカもクジラも生きて行けません。生きて行く仕掛けを探すため、プランクトンネットの入口にカメラと光源を取り付け、プランクトン採集と同時に映像を撮り続ける装置を開発しました。調査の結果は餌となるプランクトンは海中でパッチ状に存在しており、それを大型生物が狙って集まる事が解明されました。

一方、海中環境や生態を調査するためには、海中を自由に運動する小型ROVシステムが必要で、小さな漁船でも使えるシステムで、適切な時期に適切な海域で調査できる事が重要であると主張してきた。特にROVが取得する映像は高画質・リアルタイムで海中の状況が把握できることが、生物種の決定など多方面で有効となる。そこで実際に深海生物追跡調査ロボットシステムPICASSOを専門家の協力を得て開発し、ハイビジョンカメラを搭載して調査を行い、プランクトン生態系機能の解明に寄与してきた。講演では、これらの成果を素晴らしい映像と丁寧な解説があり、多くの工学関係者は生態系の不思議に触れることができました。

 これらの海洋科学・生物・環境の研究は海洋技術の開発があって達成されたもので、技術開発の重要性が強調され、今後の海洋技術の研究開発の発展を大きな期待を持っていると、完璧な日本語で講演されました。 (文責:宮崎)

20101

1月23日、有人潜水艇トリエステ号による

マリアナ海溝世界最新部潜航50周年

 1月23日は、今から50年前の1960年、バチスカーフ型有人潜水艇トリエステ号が、マリアナ海溝の世界最深部に潜航した日。当時のパイロット、Don WalshJacques Piccardの両氏は、米国アイゼンハワー大統領から表彰を受けるとともに、この記録がギネスブックにも記載されることとなった。なお、この潜航時には、船外に分厚い耐圧ガラス付きのRolexの時計も設置され、ともに世界最深部へ潜った。

 1985年の25周年記念(Silver Anniversary)はスイスのレマン湖で開催されているが、今年2010年のこの日は、50周年記念(Golden Anniversary)としてMTS San Diego Section主催で記念講演会が開催された。

 当日は、Don Walsh氏の記念講演とともに、当時の貴重な写真展示なども企画された。MTS JournalVol.43, No. 5: Into the Trench: Celebrating the Golden Anniversary of Man's Deepest Diveと題して特集号を組んで発行されたばかりである。この記念講演会へは、現在、世界最深部へ潜航可能な有人潜水艇であるJAMSTECの「しんかい6500」のチームから祝電が届けられた。なお、もう一人のパイロットであるJPiccard氏は既に物故されている。

 ところで、Don Walsh博士は、我が国とも縁が深く、JAMSTECの深海有人潜水艇「しんかい2000」の建造・運航のアドバイスならびにパイロットの養成研修などに携わった。また、1988年には、MTS日本支部設立あたって本部から設立許可証ともいうべきCharterを持参して、設立総会に直接参加してくれた人物でもある。

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年頭所感「各論に花が咲く年に」MTS日本支部長 酒匂敏次・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

地球深部探査船「ちきゅう」特別視察会、217日(於:清水港)・・・・・・・・・・・・・・・・2

D. Lindsay博士(JAMSTECMTS International Award受賞記念特別講演会・・・・・・・・・・2

  「浮遊生物種多様性とその生物機能を地球規模に調査するシステムの開発」

1月23日、有人潜水艇トリエステ号によるマリアナ海溝世界最新部潜航50周年・・・・・5

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トリエステ号の写真
酒匂支部長の開会挨拶 高川トレジャラのOCEANS視察報告

D. Lindsay博士(JAMSTECMTS International Award受賞記念特別講演会

「浮遊生物種多様性とその生物機能を地球規模に調査するシステムの開発」

 200910月にアメリカ・ミシシッピー州ビロキシで開催のOCEANS2009MTS共催)において、Dhugal Lindsay博士(海洋研究開発機構)がMTS International Awardを受賞されました。受賞理由は、長年にわたるMTS JOURNALの編集委員、および同博士の推進する海中生物の多様性を新しいROVの開発を通して、サイエンスとテクノノジーの発展に寄与したことが認められたことによります。Lindsay博士の研究は今後の地球環境変動に海洋の生態系機能が与える影響を解明できると期待されております。

 そこで、MTS日本支部では、Lindsay博士の功績をたたえ、昨年12月8日に、JAMSTEC東京事務所会議室において受賞記念の特別講演会を開催いたしました。

プログラムは次のとおりです。

年頭所感

 1980  故・岡村 健二
 1984  
JAMSTEC
 1987  故・浜田 昇
 1994  元 良 誠 三

 1999  酒 匂 敏 次
 2000  
前 田 久 明
 2001  故・大庭  浩
 2004  奈 須 紀 幸

各論に花が咲く年に

MTS 日本史部長 酒匂 敏次

 MTS 日本に関係の深い日米両国で、政治、経済の両分野が、大きく変化する動きを見せた過去2年間であった。海洋に関わる環境、資源等に関しても、昨年は、世界規模での問題提起や、協議の場の用意等が、注目を浴びた年であったといえるかも知れない。昨年末、東大安田講堂で開かれた海洋技術フォーラム主催の集会が、多くの参加者を得て盛り上がったのも、このような内外情勢をよく反映した結果ではないかと見ている。

 国としての取り組みの準備がスタートしたところであるから急いでみても始まらないが、総論から各論への順調な展開に大いに期待したい年になりそうである。実は幹になるわけではない。枝が伸び蕾が膨らんで花が咲き、その先に実がなって、収穫の秋に至る。今年はちょうどその花の咲き始めるところまではいきたいものである。

 海洋プロジェクトは地球規模のものから地域ウオーターフロント規模のものまで大小いろいろであるが、昨今の日本では、特に地方の活力が云々されることが多くなっている。日本のgeopolitical position を視野に入れると、地域海プロジェクトの重要性は看過できない。枝の多くがこの問題の解決に向けて伸びていってほしいものだと感じている。

<参考:MTS International Award 日本関係受賞者>

Dhugal Lindsay博士の日本語による特別講演